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「はじまりのうた」何気ない音楽が人生を変える、という話...

「はじまりのうた」何気ない音楽が人生を変える、という話

Think Of Wonderful Films.
略してTOWF(トウフ)のお時間です。

いつからか映画への愛が無限大に大きくなった男による、素敵な作品たちに出逢いたい方々のための今シリーズ。
映像作品をベースに音楽やファッションなど様々なジャンルの作品に出会えるような、さながら豆腐のように栄養満点の場所になることを目指しております。
カツオ節でも削りながらおつまみの冷奴を待つつもりで読んでくだされば幸いです。

さて記念すべき第一回の映画は、「はじまりのうた」

監督、脚本:ジョンカーニー

キャスト:キーラナイトレイ、マークラファロ、アダムレヴィーン、ヘイリースタインフェルド他

ジョンカーニーという監督さんの(日本で公開された中で)2本目の映画でして、彼氏に浮気された女性と落ち目の音楽プロデューサーが偶然に出会い、路地裏や駅のホームなどニューヨークの至るところでアルバムのレコーディングをする、と言うお話の音楽映画。

音楽映画なのでそうじゃなかったらやばいじゃんって話ですが、これがまた登場する曲たちが最高に良い作品なんですよ。

自分の人生を歌う音楽にはじまり、自分らしい音楽に還って終わる。

そのレコーディングを通じて、登場人物たちが「人生をもう一度はじめていく」素晴らしい作品です。ぜひ観てください。

音楽が好きな人、映画が好きな人、何かに打ち込んでいる人の心に必ず響くと思います。

プチ情報として、あの”Maroon 5”のボーカリストであるアダムレヴィーンが今作で映画に初出演したことでも話題になりました。それも主人公の恋人デイブ役で、そのセクシーな歌声とスーパースターぶりを遺憾無く発揮しております。

引用画像
出典:Yahoo!映画

歌は上手いわ、紡ぎ出す歌詞や旋律も洒落てるわ、おまけにセクシーなお顔までお持ちだわで、嫉妬を超えた感情を芽生えさせてくるタイプですね。文字通りのスーパースターの自然な演技が観られる作品です。ぜひ観てください。

はじまりは暗いうた

舞台はニューヨーク。「都会で一人ぼっちのあなたへ」ある街角の小さなバーで、一人の女性、グレタ(キーラナイトレイ)がそんな言葉を添えてギターを弾き語ります。

Here comes the train upon the track

ほら、線路の上を電車がやってきた

And there goes the pain it cuts to black

真っ暗になれる痛みがそこをゆく

Are you ready for the last act?

最後の一歩の準備はいい?

To take a step you can’t take back

後戻りなんてできない最後の一歩

一番のメッセージどころであるサビの歌詞。どうやら見たところ、電車に飛び込んで自殺しようとしている人の歌のようですね。暗い、暗いぞグレタ。幸先が悪い。ここがそこらへんの居酒屋なら、「グレタがグレた」なんてくだらない言葉が聞こえてもおかしくないかもしれない。星一徹なら甘ったれるなと得意のちゃぶ台返しを見せるところです。平手打ちのセットも来るかも。

当然その場に居合わせた人たちから拍手が起こることはなく、彼女も歌うべきじゃなかったという表情を見せます。

ところがそんな空気の中で、彼女の歌を聴いていた一人の酔っ払いが勝ちを確信したような、嬉しそうな表情で佇んでいました。

彼は落ち目の音楽プロデューサーのダン(マークラファロ)という男で、”確実に売れるモノ”なんかじゃなく鈍くとも光る”心を惹く本物”を探していて、彼女がそれだと言うのです。

同じ日にクビって言われたけど。ついでに娘もその瞬間に居合わせてたけど。

「おれにはわかる。良い音楽を聴くとバンドの音が勝手にイメージできるんだ。君の曲にはそれがあった。君はスターになれる。アルバムを作ろう」

誰も盛り上がってないのに何言ってんだこの酔っ払いは。アホなのか。グレタはそう思いつつも、この際だやってやんよと乗っかります。自分のこと認めてもらえたら嬉しいもんね。

金はない、時間はある。音楽がある。

引用画像
出典:映画.com

「さあ、レコーディングを始めよう」

ニューヨークのストリートで音楽を続けていたグレタの親友スティーブ(ジェームズコーデン)など、ツテをたどったりしてメンバーを集め、アルバム制作に取り掛かった二人。

意気込みは相当なものですがお金は無いので、地下鉄のホームや寂れたビルの屋上、奥まった路地裏などニューヨークの至るところでレコーディングを行うことにします。

「何が起きても録り続ける。怒鳴られても、警察がきても」

それは何が起きても好きなことをやめない、という決意の表れでもあって、笑っちゃうくらいにシャレてます。これが私たちの音楽だと。楽しそうなだけでなく、かっこいいシーンの連続です。

音楽への情熱が溢れるメンバーたちはレコーディングを通じて、それぞれのワクワクを音色に乗せていきます。そしてそれは力強くも優しい心を癒す波となって、グレタの傷心やひび割れていたダンの家族との関係性を少しずつ、埋めていく。

言ってしまうと、それは劇的でも意表をつくようなメロディーラインでもありません。ですが彼らが作り上げている音楽には日常があります。ありふれたような、何気無い日常の風景があるんですね。

嬉しかった、悲しかった、好きだった、嫌だった。彼女がそう感じた時のことを音楽に昇華させて歌うから、誰もがそれぞれの中に持っているそんな感情を思い出すんです。だから響く。

バカみたいに愛してた。

音楽への昇華。それがわかるシーンがあります。

思わず左右に揺れたくなる心地良いピアノのリズムに優しいギターのストローク。

スティーブとグレタは、その場で作った曲を浮気した元カレデイブの留守電に吹き込みます。

And you have broken every promise that we made 結局あなたは私たちの約束を全部破ったよね

And I have loved you anyway どっちにしてもあなたを愛してたけど

And you have broken every single fucking rule 結局あなたはくっだらないルールを全部、破ったよね

And I have loved you like a fool それでもバカみたいに愛してたよ

許せなかった、苦しかった、辛かった、でも大好きだった。と、自分の気持ちと向き合う。乗り越えるために。

彼女はこうして、「自分の音楽」を作るんですね。彼女だけの。そうして前を向く。音楽と共に。

彼女の辛い経験が、それでも楽しかった想い出が、音楽に昇華した瞬間です。

実は、最初の暗い歌にも昇華が伺える歌詞が存在しています。

So you find yourself at this subway 気が付いたら地下鉄にいて

When your world in a bag by your side 自分の世界の全てを詰めたバッグが横にあった

And all at once it seemed like a good way 一瞬、それが最善に思えたけど

You realized its the end of your life それが人生の終わりになると気づいた

For what it’s worth それに何の価値があるんだろう

ここからサビへと移るんですが、こう見るとどうですか?辛くて苦しくてどうしようもなくて、もう死んでしまいたいとすら思ってしまっている誰かに声をかけているようにも思えないでしょうか。

「本当に良いの?本当に最期になるよ。本当は、死にたくなんてないんじゃない?」

もしかしたら家を飛び出してすぐに作ったのかもしれませんね。

そう考えると、より音楽への昇華が感じられます。

また、グレタとダンがふとしたきっかけで夜のニューヨークを歩く名シーンには、別の形で音楽の持つ力が描かれています。

ダンがポツリと彼女に語ります。

「音楽は本当に素晴らしいよ。つまらない日常も音楽があれば意味を持つようになる。妻とはお互いのプレイリストを見せれば性格がわかるって意気投合してさ。それが最高のデートだった」

彼の語りには妻や娘への愛が音楽と共に確かにあって、ぎこちなく今も残っているんです。酒ばかり飲んで、仕事もてんでダメになっちゃってて上手くいってないことで昇華できていないけれど。それが余計に関係をぎこちなくしてしまっていたんですね。

二人に共通していたのは、バカみたいに音楽を愛していること、そしてバカみたいに誰かを愛し傷ついた過去でした。

そんな二人に応えるようにして、音楽は彼らの日々を何気なく彩り「もう一度はじめる」時間をくれたんだと思います。

音楽ってほんといいやつです、幸せになってほしい。

グレタの紡いだ人生を歌う音楽。喜怒哀楽の日常が流れゆく人生を歌った何気ない音楽が、人生を変えたんですね。

そんな二人が作ったアルバムはどうなったか?それが周囲にどんな影響を与えたか?

それは観てのお楽しみです。観た人はもう一度思い出して先にニヤついておきましょう。

自分らしい音楽に還る粋なラストです。

それではまた次回の上映時間にお会いしましょう。


普段はネットの服屋さんでスタイリングとカメラマンをしています。写真と映画が大好きです。バックトゥザ・フューチャーを観て「為せば成る」が座右の銘になり、何事もやってみるマンに変身を遂げたイギリスと大阪の血を引く25歳です。

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