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「ビルカニンガム&ニューヨーク」好きなこと”だけ”で生きた男の境界線のない心の話。...

「ビルカニンガム&ニューヨーク」好きなこと”だけ”で生きた男の境界線のない心の話。

Think Of Wonderful Films.

略してTOWF(トーフ)のお時間です。

 

いつからか映画への愛が無限大に大きくなった男による、素敵な作品たちに出逢いたい方々のための今シリーズ。

映像作品をベースに音楽やファッションなど様々なジャンルの作品に出逢えるような、さながら豆腐のように栄養満点の場所になることを目指しております。

カツオ節でも削りながらおつまみの冷奴を待つつもりで読んでくだされば幸いです。

 

此度の作品は「ビルカニンガム&ニューヨーク」

 

好きなことで生きていく。どこかで聞いたような、ないような。

 

某動画投稿サイトのことはさておき、それだけで不自由しない暮らしができる収入を得たいほど好きなことがある人には、魅力的で理想の言葉ですね。

俳優やモデル、お笑いなどの芸能人。写真家や画家、音楽家などのアーティスト。プロのスポーツ選手もそうですが、多くの人に愛され親しまれ、憧れられる職業です。

その理由にはかっこいいなどの感情的なものもありますが、不自由しないどころか自由で優雅な暮らしができるというのも多分に含まれるでしょう。誰にでもできることではなく、自分にしかできないことで評価されるというのも一つですね。

 

そんな生き方を極めた人物が、ニューヨークにいました。彼の名はビルカニンガムという写真家で、2016年の6月25日に惜しくも亡くなってしまったのですが、感嘆に尽きる生涯を送った知る人ぞ知る伝説的な人物です。別の言い方をするなら、好きなことで生きるということを極めすぎて伝説になったとんでもない人物です。

世界中にファンを持ち、ファッション界を牽引している雑誌『VOGUE』の編集長を務めるアナウィンターに、”We all get dressed for Bill.(私たちはビルのために着飾る)”と言わしめたフォトグラファー。それがビルカニンガム。

引用画像
出典:映画.com

 

そんな彼が好きなことで生きることでは飽き足らず、好きなこと”だけ”で生きることができた所以は、彼の珠玉の言葉たちから紐解いていくことが出来ます。

 

「最高のファッションショーは常にストリートにある」「撮るかどうかはファッション次第」

 

ファッション界の誰もがスナップされたがる存在だった彼は、かのパリコレクションなどファッションの最先端の場にも顔パス状態でした。

世界を魅了するブランドのデザイナーによるコレクションは、それは洗練された美しいデザインが出揃う場所です。ファッション界の誰もが憧れる、最高の栄誉ある場所とも言えます。

「ビルが見ていたものが半年後にはトレンドになる」とまで言われていた彼がそんなコレクションの場を見ていても、最高のファッションショーの場所は「ストリート」でした。

 

それはおそらく発信側であるコレクションを見ているだけでは意味がなく、ストリートに居る受信側のファッションも見て初めて”トレンドの流れ”が目に見えるようになってくるから、というのが一つ。

そしてさらにストリートにはセレブだけでなく多くのタイプの人がいて、それぞれに違った表情のファッションがあるからというのが理由として挙げられます。

引用画像
出典:映画.com

5番街に並ぶブティックのラグジュアリーなアイテムを豪快に着こなしている人、背伸びをして自分なりのコレクション解釈を表す人、独自の世界観を持って突き抜けている人、自分の表現したい何かをファッションで表現している人、好きな服をただただ愛して着ている人。

溢れ返るほどにたくさんいる人混みの中には溢れ返るほどの感情があり、ファッションを通じた”何か”があります。その送受信がコレクションとストリートにはあって、その中から「次」がやっと何かしら見えてくる。

そしてその”何か”が見えるようになるためには、相手が有名無名かなんて関係無く「自分の心を惹く」あるいは「何かを感じる」ものを撮り続けるしかない。事実彼は相手が誰であろうと関係無しに、大女優でも素人でも子どもでも、肌の色や人種の違いがあっても、境界線のないボーダーレスな心でファッションだけを見て撮るかどうかを決めた。大バカと言われても、ファッション次第だと。

ビルカムニング

ボーダーレスな心で、ただ”好き”を追いかけた。磨かれるためにあったセンスがそうして光を放ち始めたんです。

彼なりの言い方では、喧騒の中に身を置いて心を惹く装いを撮り続けると「街が語りかけてくる」のだそうです。好きこそ物の上手なれ、継続は力なりとは良く言ったものです。

 

「ファッションは日々を生き抜くための鎧だ」

 

ファッションとは?そう問われた彼が、少し間を置いて答えたこの言葉。まるで続いてゆく日々は苦しいものだと言わんばかりの一言です。

世界にはいろんな人がいて、人種や肌の色だけでなく宗教的な価値観の違い、そしてLGBTなどの内面的な違いから起こる差別や争いがたくさんありますし、本当に数知れない問題があることを考えると、もしかしたらその通りなのかもしれません。

たとえそうでも、”好き”はそれを乗り越える力になることを彼は言いたいのだと思います。好きの理由は分からずとも、彼には何にも変えがたいファッションへの透き通るような愛があって、それが生きる喜びだったから。

 

また鎧だと考えるからこそ、自分なりのセンスを発表する場とも言えるストリートに強いクリエイティビティと生命力を感じるのも理由にあるのではないしょうか?

ファッションという鎧を身につけて、センスという武器を取る。用意された衣装を着こなしたりコレクションの真似をするだけではダメで、そこに自分なりの武器(髪型や体型)をプラスするからこそ意味がある。

そう考えるとそんな意味のあるファッションが多く存在しうるのはストリート、という考えにも頷けますね。

引用画像
出典:HUFFPOST

引用画像
出典:epokal

 

「自由より価値のあるものなんてない」

 

彼は、報酬を一切受け取らないことでも有名でした。その理由は”自由にやるため”、それだけです。

「お金を受け取ってしまうと自由にやれなくなる。次々に介入されて、口出しされるのはごめんだ。僕は自由にやる。自由にやるためにお金は一銭も受け取らない」

 

自由のために、それなりに獲られたであろう報酬を受け取らない。パーティー会場などでは一杯の水すら口にしない徹底ぶりでした。

ファッションが大好きなだけだから仕事をしているという感覚もないし、自由にやっているから生活に不満を持ったこともない。食事は最低限で十分だし、豪邸に住みたいとも思わない。自分が大好きなファッションを撮り続けられるなら、それで十分。

 

好きなこと”だけ”で生きる。そのために彼が手放したものは計り知れません。手放した、というより気にしなかった、の方が正しい表現かもしれませんね。

裕福な生活も、家族を築くことも気にしなかった。性別も肌の色も人種も、その人が有名かどうかも気にしなかった。

 

そんなボーダーレスな心が彼にもたらしたものは圧倒的な自由と生きる喜び、そして偏りのない、多くの人との出会いと尊敬でした。

ビルカニンガムほどの生き方の極致への到達は容易なことではありませんが、彼のこうしたボーダーレスな心や、ファッションへの透き通るような愛から学べることはたくさんあるではないでしょうか。

 

引用画像

彼の魅力を全て語るには短く、理解するには十分すぎる濃密な84分の今作。短く静かな作品でありながらとんでもない熱量のこもった映画になっています。

 

ファッションが好きな人は絶対に見るべき作品だと言っても過言ではありませんし、一つの極致とも言える彼のプロフェッショナルとしての生き方は一見の価値アリです!

 


普段はネットの服屋さんでスタイリングとカメラマンをしています。写真と映画が大好きです。バックトゥザ・フューチャーを観て「為せば成る」が座右の銘になり、何事もやってみるマンに変身を遂げたイギリスと大阪の血を引く25歳です。

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